【食物アレルギー当事者インタビューvol.1 】食品に対する理解を深めて。安心できるアレルギー対応とは

食物アレルギーがある人は近年増加しており、日常生活や外食において多くの人が困難を抱えています。しかし、当事者や家族以外の人にとっては具体的な悩みが想像しづらく、どのように対応すればいいのか悩んでいる外食事業者も多いようです。

 

そこでCAN EATは、アレルギー当事者にインタビューを行い、日常生活の苦労や工夫、外食時の悩み、アレルギー対応について感じていることを伺いました。第1回は、生まれたときから多様なアレルギーと付き合ってきたコウさんの経験談です。

お話を伺った方:コウさん(20代男性)

食物アレルギーとは0歳からの付き合い。外食中にアナフィラキシーショックを起こした経験も

━━ どのような食物アレルギーがありますか?該当する食品や症状について教えてください。

牛乳、そば、落花生、かに、魚卵のアレルギーがあり、食事から完全に除去して生活しています。0歳の頃からずっとアレルギーがある状態で、昔は豚肉や牛肉、小麦、大豆などにも反応していました。

 

アナフィラキシーショック*1 を起こす恐れがあり、命にも関わるため、エピペン*2 を常に携帯しています。過去にアナフィラキシーショックを起こした経験は4、5回、エピペンも3、4回は打っていると思いますね。

<写真:普段の食事の一例>

 

*1  アナフィラキシーとは、「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」をいい、アレルギー反応でもっとも重篤な状態である。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックという。

*2  医師の治療を受けるまでの間に症状の進行を一時的に緩和する補助治療薬。アナフィラキシーの既往がある患者やリスクの高い患者に処方される。

参考:https://allergyportal.jp/knowledge/anaphylaxis/

 

━━ 過去にアレルギーを発症したのはどのような場面でしたか?

最近だと、2、3年前に旅行中の外食で症状が出ました。責任者にアレルギーがある食品を伝え、確認をとった上で焼肉定食を食べたのですが、付け合わせのポテトサラダに乳製品が入っていたんです。

 

粘膜の症状や皮膚のじんましん、痒み、目の充血、鼻水などの症状が出てきたので、これはまずいと思ってエピペンを打ち、救急車を呼びました。1日入院することになりました。

 

━━ 大変な経験をされましたね……。アレルギーを発症したことはお店に伝えましたか?

そのときはお店の前で救急車を呼んだので自然と伝わりましたが、もし離れた場所で呼んでいたら伝えていなかったかもしれません。自分で一応確認した上で食べたので、店を責めるのもどうなんだろうと思ってしまい……。

 

ずっとアレルギーがある人生を送ってきたので、完全に安全だと思って食べることはなく、そういうリスクは折り込み済みなんですよね。慣れすぎてしまっているのかもしれません。

 

家ではアレルゲンを完全除去。リスクはできるだけゼロに近づけたい

━━ 今は一人暮らしとのことですが、ご実家にいた頃はご家族でどのような食事をしていましたか?

私が食べられるものだけを使ったメニューをみんなで食べることが多かったです。シチューやグラタンなどが出ない食卓だったので、食物アレルギーがまったくない弟に対しては少し罪悪感を抱いています。

<写真:自宅での食事の一例>

 

━━ 加工品にはどの程度気をつけていましたか?工場での微量混入(コンタミネーション)については意識していたでしょうか?

該当するアレルゲンを含む商品と同じ工場で製造された商品も、まったく気にせずに食べていました。当時はコンタミネーションの危険性についてあまり勉強できていなかったので、知らず知らずのうちに食べていましたね。

 

工場では一度ラインが動き出したらなかなか洗えないそうですが、購入者にはそこまで詳しく伝わっていない場合も多いのではないでしょうか。

 

今は知識はそこそこありますが、それでも工場でのコンタミネーションはほとんど気にしていません。食べられるものがなくなってしまうからです。

 

━━ では、ご家庭でのコンタミネーションについてはいかがでしょう。たとえば食器の洗い分けはしていましたか?

基本的に家にアレルゲンを持ち込まない方針で生活していたので、スポンジを変えるといった特別な対応はしていませんでした。

 

でも、一人暮らしを始めた後、一時的に実家に戻ったときに、自分から調理器具などを分けてもらうようにお願いしたことはあります。そのときは家族が新しくフライパンを買い足してくれたりしていましたね。絶対に分けなければいけないわけではありませんが、できるだけリスクをゼロに近づけたいと考えました。

 

━━ 現在、普段の食事において苦労している点はありますか?

大きな苦労は感じませんが、メニューを決めづらいなと思うときはあります。以前、大豆があまり食べられなかった時期は、麻婆豆腐などが食卓から消え、お肉やお魚ばかりになってしまったので少し不便に感じました。

<写真:普段の食事の一例>

 

━━普段の買い物についてはどうでしょう?

生まれたときからずっとアレルギーがあり、当たり前になってしまっているので、そこまで苦労しているとは感じません。お菓子やカップ麺、パンなどは、長年の経験から「これは食べられそうだな」と目星がつくようになってきました。たとえば「フランスパンなら卵や乳製品はほとんど使わないよね」という具合に判断します。

 

また、新商品については、スーパーに行った際に食品表示を見て情報を集め、日々アップデートしています。このパッケージはOK、こっちのパッケージはNG、と記憶していくことで、自分に合ったものをスムーズに買えるようになっていきました。

<写真:朝食の焼きおにぎり>

 

外食ではすべてのアレルギーを伝えてシンプルなメニューを注文。お店の人への確認は入念に

━━ 外食はよくしますか?

一人暮らしになってから頻度が増えました。仕事の影響もあり、外食やコンビニ食が多くなりましたね。

<写真:昼食のコンビニ弁当>

 

━━ お店はどのような基準で選んでいるのでしょうか?

食べに行けるお店が何軒かわかっているので、普段はその中で回しています。旅行などで初めて行った土地で外食をする場合は、食にこだわりを持っていそうな個人のお店に行くことが多いですね。店構えで判断しています。

<写真:よく食べにいくラーメン屋>

 

━━ お店の人にアレルギーを伝えるときはどんなふうに伝えていますか?

最初に該当するアレルギーをすべて店員さんに伝え、「メニューの中でそれらを使っていないものを頼みたいので、確認をお願いします」と言います。アナフィラキシーショックが起こりうる、といった症状に関することは伝えません。過去のアレルギーの発症は基本的に原材料にアレルゲンが入っていたことによる誤食が原因だったので、調理器具を洗うようにお願いすることもありません。

 

━━ どのような料理を注文することが多いですか?

創作料理でなければ和食は大丈夫だと思っているので、和食の居酒屋などでシンプルなものを注文することが多いです。少しでもアレルゲンが入っている可能性のあるグレーな料理は注文しないように心がけています。

 

━━ 食べるときに気をつけていることがあれば教えてください。

違和感があればすぐ食事を中止する、気になったらすぐにお店の人に確認するといった基本的なことを徹底しています。

 

アレルギー表、丁寧な説明、誠意が伝わる言葉と知識。アレルギー対応のレベルが高いお店の共通点

━━これまで行ったお店の中で、アレルギー対応のレベルが高いと感じたのはどのようなお店ですか?

一つ目は島根のお店で、対応が早くて丁寧なだけではなく、アレルギーについて伝えた際に、「店をやるからにはアレルギーについてもちゃんと知っとかんとあかんから」と言ってもらえたことがうれしかったです。アレルギー対応に真剣に向き合っていることが伝わってくるお店は、信頼できますよね

 

そのお店は、怖がりながら対応するのではなく、ちゃんとした知識を持った上でアレルギーについて訊いてくれました。対応する責務があると感じて積極的に取り組んでいるのが伝わってきたのでとても安心できました。

 

二つ目は三重県の農園直営のビュッフェ式レストランです。店員さんがアレルギー表を持ってきて、食べられるものと食べられないものを丁寧に教えてくれました。並んでいるものを一緒に見ながら説明してくれるのでとてもわかりやすかったです。

 

三つ目は、ディズニーランド。やはり別格だと感じました。まず、事前の問い合わせへの対応が素晴らしかったです。園内で提供しているすべてのメニューの原材料表示を送ってくれたので、本当に感動しました。ワゴンで売っている食べ物に関する情報も入っていたおかげで、「このポップコーンなら食べられるぞ」と判断できました。

 

園内では、アレルギーがあると伝えると、担当者がすぐに出てきて、「これはこういう原材料だから食べられますよ」と表を見せながら丁寧に説明してくれました。教育が行き届いているんだなと思いました。

 

言動の不一致と食品に関する知識不足が店に対する不信感へ。外食のアレルギー対応の課題

━━ 逆に、アレルギー対応のレベルが低いなと感じたのはどのようなお店でしたか?

対応のレベルが低いというよりは、怖いなあと思ってしまうのは、店員さんが外国の方だったときです。やはり言語の壁の問題だと思うのですが、アレルギーについて話しても正確に伝わらないことが多いので、リスクを回避するためにどうしてもそういうお店は避けてしまいます。命を守るためには必要な選択なのかなと思っています。

 

また、安請け合いをされた場合もその店は信頼できないと感じます。「こういうアレルギーがあるので、確認してもらえますか」と伝えたときに「わかりました」と言ったのに、実際には確認していなかったりとか……。「これは大丈夫ですよ」と言っていたのに、運ばれてきた料理にチーズがかかっていたこともあります。お金を払ったのに食べられず、お酒だけ飲んで帰るのは悲しいですね。

 

━━ では、現時点で、飲食店の標準的な対応はどのようなものだと感じますか?

アレルギーについて店員さんに伝えたときに、責任者や料理人に確認してくれるお店が標準的なのかなと思います。ただ、確認してくれた場合でも、まだまだ知識不足だと感じることが多いです。

 

たとえば、牛乳アレルギーだと伝えると、「マヨネーズを使っていますが大丈夫ですか?」と尋ねられることがあります。マヨネーズを乳製品だと思っているんですよね。

 

アレルギー対応に力を入れるかどうかに関係なく、ご自身のお店で使っているものが何からできているのかくらいは、把握しておいてもいいんじゃないかなと思います。食材に興味がないのかな、無頓着なのかなと感じてしまい、そういうお店に対しては良い印象を持てません。

 

ハレの日はいつも以上に安全対策を徹底。ウェディングの席では自分で直接確認したい

━━ それでは、普段の外食ではなくウェディングなどの大規模な会食でのアレルギー対応についてはどう感じていますか?CAN EATではこの分野にも改善の余地があると考えており、婚礼事業者向けのアレルギー事故防止サービスも展開しています。過去の印象的なエピソードがあれば教えてください。

過去に出席したウェディングパーティーは、招待状をもらわずに途中から参加した席だったので、アレルギーについて伝える機会すらありませんでした。立食形式で、飲まず食わずのまま帰ることになってしまい、苦い思い出になりました。

 

━━ それはお辛いですね……。もし招待状があったら、どのようにアレルギーを伝えますか?

招待状がある場合は、アレルギー欄に書いて伝えるだけではなく、会場に直接問い合わせて確認すると思います。経験上、自分以外のだれかに頼んで伝えてもらっても上手くいかないことが多かったので、安全性を考えると自分で伝えるのが一番だと思っています。細かいニュアンスが伝わらなかったり、伝え忘れがあったりするんですよね。

 

結婚式というハレの日にアレルギーを発症して迷惑をかけるわけにはいかないので、いつも以上に徹底して安全対策をしたいです。

 

大人のアレルギーと食品への理解を。アレルギーを持っていても普通だよね、と思える社会になってほしい

━━ 最後に、外食事業者に対してメッセージをお願いします。

アレルギーは子どものものと思われがちですが、大人でもアレルギーがある人はたくさんいます。まずはそのことを知っていただいて、大人のアレルギー対応についても検討してもらえたらうれしいです。

 

特に気になるのは、飲食店で働いている人の中に、食品に関する知識が少ない人が意外に多いことです。アレルギー対応のレベルにかかわらず、自分の店が扱っている料理の成り立ちくらいは、食に携わっている人なら知っておいてもいいのではないかと感じます。

 

また、これは事業者さんだけでなく世の中全体に関することなのですが、アレルギー当事者も含め、アレルギーを持っていること=悪いこと、迷惑をかけることだと捉えている人をしばしば見かけます。アレルギーを持っていても何も悪くないよね、そういう特質があるだけで普通だよね、とみんなが思えるような社会になってほしいです。

 

食の多様化に対応する
CAN EATのITサービス

食物アレルギー、ベジタリアン、ヴィーガン、健康上の理由などの
お食事制限にスマートに対応する3つのツール

  • 食事嗜好プラットフォーム「CAN EAT」

    アレルギーなどの理由で食べれないものや、苦手なもの、好きなものをWEB上に記録し、友達や飲食店にシェアできるサービスです。

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  • アレルギーヒアリングシステム(事業者向け)

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  • アレルギー管理サービス(事業者向け)

    スマートフォンで原材料を撮影するだけで、アレルギー表示を簡単に作成できるサービスです。飲食店や保育園などでご活用いただけます。

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