仏教は日本や中国をはじめ、タイ、ベトナム、ミャンマーなど東アジア〜東南アジアを中心に信仰されています。宗派も国も多いため、食文化や食の位置付けは多種多様。一部の宗派や厳格な信者には食事制限があり、個別の配慮が必要になるケースもあります。食のタブーやおもてなしのポイントを知り、対応できるように準備しておくと安心です。
仏教には「不殺生」の戒律があるため、肉食は避けるべきものと考えられてきました。そのため精進料理の文化が生まれましたが、現代では肉食をする人が多くなっています。食事のタブーがあるのは一部の宗派に限られます。
また、僧侶などの厳格な信者にとっては食事そのものも修行の一部であるため、食事内容や調理方法、作法、心構えに関するさまざまなルールが存在します。たとえば南アジアを中心に信仰される上座部仏教の僧侶は、午前中に1日2食の食事を済ませ、午後は何も食べないのが一般的です。
仏教の代表的な食事である「精進料理」は、もともとは野菜に塩や醤油で味をつけただけの質素なものでしたが、調理に工夫が加えられ、懐石料理の原点になりました。現代では日本の文化を象徴する料理として、会食やおもてなしの場面でも重宝されています。その高い栄養価とヘルシーさから健康食としても多くの人に親しまれ、ベジタリアン(ヴィーガンなど)からも人気の高い料理です。
僧侶や信仰心の強い信者、一部の宗派の信者のなかには、下記の食材を忌避する人がいます。日本では、修行中に限って食事を制限するケースもみられます。
東アジアや中央アジアを中心に広がった大乗仏教では、肉・魚・卵などの動物性の食べ物全般を避ける傾向があります。また中国仏教の観音信仰では牛肉を食べない人がいます。肉を食べてもよいとされる上座部仏教においても、積極的に生き物を殺して僧侶に肉を提供することや肉に関する仕事に就くことはタブーとされています。
肉食が禁忌とされる場合には、肉そのものだけでなく、動物のエキスを使った出汁やスープ、動物性の脂肪でできたバターやラードも食事に使用できません。植物性の出汁や油を使う配慮が必要です。精進料理でも鰹出汁は使わないように注意しましょう。
「五葷」と呼ばれるネギ科の植物も、厳格な信者は禁忌として避ける傾向があります。臭いが強いため気を損ない、修行の妨げになると考えられているからです。
僧侶をはじめとする信仰心の強い仏教徒は、食事の場面も修行の一環ととらえており、食事中のマナー・作法を大切にしています。細かなルールは国や宗派によってさまざまですが、とりわけ食前・食後の祈りはどの宗派でも欠かせません。
日本でよくみられる「いただきます」「ごちそうさまでした」の一礼・合掌は、食べ物そのものや生産者、調理をした人など、食事に関わるあらゆる人・ものに対する感謝の気持ちを伝えるものです。起源には諸説ありますが、仏教の影響を重視する見方もあります。
宗派や信仰の程度によって食事制限の有無が異なるため、個別に確認しておくのがベターです。食事を提供する際には「ベジタリアンかノンベジタリアンか」を中心に、食べられるもの・食べられないものを事前に把握しておくとよいでしょう。
肉や魚を食べない人がいる場合は、動物性のあらゆる食材に注意を払い、精進料理であっても出汁のとり方には気をつけてください。
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