食物アレルギーに配慮した商品にリニューアルされ、SNSで話題沸騰の『やわらか若鶏からあげボリュームパック』。味の素冷凍食品㈱製品戦略部の笹枝さんに、開発理由や商品へのこだわりについて伺いました。
<お話を伺った方>味の素冷凍食品㈱製品戦略部 笹枝由紀子さん
―売れ筋商品を食物アレルギーに配慮してリニューアルするときには、リスクの面からもブランドの面からも非常に高い壁が存在するのではないかと想像されます。『やわらか若鶏からあげ ボリュームパック』を「食物アレルギー配慮」とした経緯を教えていただけますでしょうか。
『やわらか若鶏からあげ ボリュームパック』は、発売開始から20年以上の主力商品です。これまでもリニューアルをしてきましたが、それらはおいしくするためのリニューアルであり、食物アレルギー配慮という方向性でリニューアルしたのは今回が初めてとなります。このリニューアルのきっかけは、お客様の声でした。
弊社のお客様相談室には、さまざまな商品のアレルゲンに関するお問い合わせがたくさん寄せられます。その中でも『やわらか若鶏からあげ ボリュームパック』はお問い合わせが非常に多く、特に「パッケージのアレルギー表示にある小麦が醤油由来かどうか」という確認のお問い合わせをたくさんいただいていました。からあげの衣には小麦を使用していないため、アレルギー表示の小麦は醤油由来のものですが、この醤油を小麦不使用に変えることで、原材料に小麦を表示しなくてもよい商品がお届けできると考えたのです。
また、食物アレルギー配慮をするにあたり、我々も悩みを知っておきたいと思い、食物アレルギーに悩む家庭の調査やインタビューを行いました。お話を伺うと悩みはとても深いもので、かなり苦労していることがわかりました。
たとえば「みんなと同じものが食べられなくて寂しい」「食物アレルギーに配慮した商品が近くで手に入らない」といった悩みをお聞きしました。こうした状況を知ったことで、『やわらか若鶏からあげ ボリュームパック』の食物アレルギー配慮というリニューアルが進みました。
―主力商品を食物アレルギー配慮にするには、製造環境や販売に関することなど、たくさんのリスクや壁が存在するのではないかと思います。その点にはどう対応したのでしょうか?
開発には2年ほどかかっています。もっとも苦労したのは、取り組み初期の段階です。食物アレルギー配慮の商品開発は、意義については理解される一方で、「さらにおいしくしていくことができるのか」「食物アレルギー配慮とすることで、将来おいしくリニューアルするときの手段を狭めてしまうのではないか」という議論もありました。
しかし、最終的には、この商品が多くの方に愛され続けていくためには、今までのファンの方が好んでくれているおいしさと食物アレルギーの配慮を両立していくことが必要という結論に至りました。また、リニューアルする以上は、安心して食べていただけるようにすることを考えました。そのため、製造ラインから見直しています。食べていただく以上は安心して食べていただきたいからです。
リニューアルのプロジェクトは、品質保証部、工場、研究開発などのメンバーが集まって進めました。食物アレルギー配慮の方向性が決まるまでに苦労しましたし、お客様の声を聞いて悩みの深さも共有できていたので、たくさんの壁がありましたが、メンバー全員がこだわり、実現しました。おいしさと小麦不使用を両立するリニューアルのために、からあげに合う小麦不使用の醤油を開発したくらいです。
―食物アレルギー配慮商品を強く望む声がある一方で、身近では手に入りにくいという課題があります。小売りにとって食物アレルギー配慮の商品は、一般的にはたくさん売れない商品と認識されていますが、この商品については多くの店頭の冷凍食品コーナーに置かれています。その点でこの商品のすごさを感じます。
身近に手に入らないという悩みも考慮した上での既存商品のリニューアルです。リニューアルを考えた当初、食物アレルギー配慮商品として別商品での発売にしようかと考えたこともありました。しかし、身近で手に入らないと意味がないとも思い、別商品ではなく既存商品のリニューアルとなりました。もともと販売数量が大きい商品ですが、リニューアルしても多くの店舗でお取り扱いいただいています。
―反響はいかがですか?
食物アレルギーがあるため、からあげを手軽に食べられない家庭から、「手作りしないで手軽に食べられる」という感想や、「兄弟の一人が食物アレルギーのためにみんなで同じものを食べられなかったが、この商品でみんなが同じものを食べられるようになって幸せです」といった反響をいただいています。
社内でも今後につながる大事な取り組みとして注目されています。理由のひとつは、お客様の声で、この商品に関してはファンレターのような反応をたくさん頂いたこと、もうひとつは、SNSなどでたくさん拡散されたことです。ツイッターでは「味の素さん一生ついていきます」というつぶやきも見られてうれしかったです。この商品を製造しているタイの工場の人たちに、日本の食物アレルギーに悩んでいる人の声やファンレターを共有したところ、とても喜んでくれています。
何より、この商品がきっかけかはわかりませんが、この商品をリニューアルした後にスーパーで食物アレルギー配慮商品の取り扱いが増えたというお話しを伺いました。もしこの商品がきっかけだとしたら、社会にインパクトある取り組みができたのではないかなと感じています。
味の素冷凍食品株式会社 食物アレルギーに配慮した商品に関する取り組みはこちら
▷https://www.ffa.ajinomoto.com/allergyfriendly
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