インドを中心に、ネパール、スリランカ、バングラデシュなどで信仰されているヒンドゥー教。信者のなかには、禁忌とされる牛肉や穢れとされる豚をはじめ、魚など動物性の食べ物全般を口に入れない人もいます。ヒンドゥー教徒の食事制限と調理・おもてなしのポイントを解説します。
ヒンドゥー教徒の食生活においては、個人の信仰や信条を重要視します。食材や食べる時間・時期、いっしょに食べる人など、食事全般に気を遣うのが特徴です。
牛肉・豚肉をはじめ肉食全般を避ける傾向があり、とりわけカーストや社会的地位の高い人ほどその傾向は強くなります。魚介類や卵、動物性の脂や出汁にも注意が必要です。日本食では野菜の天ぷらや豆腐、日本食以外では野菜のみを具としたピザやパスタが好まれます。
ベジタリアンとノンベジタリアンの区別がはっきりしているため、食事提供の際には事前に確認しておきましょう。人によって食べられるもの・食べられないものに差があるため、なるべく個別に対応するのが理想です。
穢れに対する意識が非常に強いため、他人と食器を共有することにも抵抗があります。鍋料理など、複数人でとりわけて食べる料理はできるだけ避けましょう。
牛は神聖な動物として崇拝されているため、タブーとされる食材です。逆に不浄な動物とみなされている豚も食べません。肉食をする人でも、食べられるのは鶏肉と羊肉、ヤギ肉に限られます。
動物の肉や骨を使ったエキスやブイヨン、ゼラチン、牛乳の脂肪であるバター、豚の脂肪であるラード、牛の脂肪であるヘットにも、調理時には注意が必要です。肉食全般を忌避する人がいるときは、植物性の出汁や脂を使うようにしましょう。
魚介類全般も、動物性の食べ物として忌避する人がいます。鰹節を使った出汁も避ける対象になるため、昆布出汁など、野菜や海藻由来の出汁を使うようにすると安心です。
卵も動物性の食べ物なので、忌避する場合があります。なかには有精卵は食べられないものの無精卵は食べるという人もいます。
ヒンドゥー教徒には生ものを食べる習慣がありません。基本的に火を通したものを提供するようにしましょう。
厳格なヒンドゥー教徒は、五葷(ごくん)と呼ばれるネギ科の植物も食べません。その他野菜では根菜を食べない人もいるため、ベジタリアンの人には事前に確認しておくとよいでしょう。
ヒンドゥー教徒のなかには、肉類や魚類を料理した調理器具が使われることに対して嫌悪感を抱く人もいます。野菜天ぷらのようなヒンドゥー教徒に好まれやすいメニューであっても、エビや魚と同じ油で揚げないように心がけるのが望ましいです。
穢れの意識から、他の人と食べ物や飲み物、食器を共有することに対して強い抵抗を示す人もたくさんいます。複数人で鍋や皿をつつきあって食べる料理は避け、なるべく個別の器で提供しましょう。
皿から取り分けて食べる料理を提供する際には、取り分け用のトングやスプーンを用意し、他人の使った食器が料理に触れないように配慮してください。
もともとはノンベジタリアンでも、特定の日や期間だけ肉を食べない人や、旅行中だけ気分を変えてベジタリアンになる人もいます。団体の旅行客の予約が入っているときには、余裕があればベジタリアン向けの料理を少し多めに用意しておくとよいでしょう。
人によって食事制限の内容や程度が異なります。肉や魚を中心に、事前に食べられないものを把握しておき、個別の対応ができるように準備しておくことが望ましいです。
ヒンドゥー教では肉食と菜食を明確に分ける傾向があります。まずはベジタリアン・ノンベジタリアンのどちらにあてはまるか確認をとっておくとメニューを決めやすくなります。ベジタリアンの場合は、根菜を食べられるかどうかも同時に確認しておくと安心です。
厳格なヒンドゥー教徒ほど、料理に含まれる食材に敏感です。安心して食べてもらえるように、オーダー時や食事の提供時には料理に含まれる食材・含まれない食材について説明しておきましょう。牛肉・豚肉・魚類にはとくに注意してください。
ヒンドゥー教では左手は不浄なものとされています。食事や食器を運ぶときや提供するときには右手を使いましょう。
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