【アレルギー表示】くるみが特定原材料に!背景と注意点を消費者庁にインタビュー

2023年3月から「くるみ」のアレルギー表示が義務づけられます。消費者庁食品表示企画課の皆さんに、くるみを特定原材料に追加した経緯や事業者に期待したいことについて伺いました。

※改正食品表示基準は2023年3月に公布・施行されますが、「くるみ」の表示義務化には2年間の猶予期間が設けられます。

 

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消費者庁食品表示企画課 課長補佐    宇野真麻さん
            食品表示調査官 川上実穂さん
            食品衛生係   吉原みなみさん

■「くるみ」表示義務化概要と、決定した経緯についてえてください。

消費者庁では、食物アレルギー当事者の皆さんへの健康被害を防止し、安心して食品を購入し食べていただくために、食物アレルギー表示制度を定めています。発症数や重篤度から勘案し、表示を義務づける「特定原材料」と表示を推奨する「特定原材料に準ずるもの」を規定してきました。この度の改正は、現在「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨している「くるみ」を「特定原材料」に移行し、表示を義務づけるというものです。

「くるみ」の表示義務化に至った理由は、次の通りです。3年ごとに実施している「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」の令和3年度結果において、平成30年度調査に続き、木の実類の症例数が増加しており、また、木の実類の内訳をみると、くるみの増加が著しいことから、くるみの症例数の増加傾向は一時的な現象ではないことがわかります。

さらに、加工食品中のくるみの有無を科学的に検証する公定検査法についても確立の見通しが立ったことから、「くるみ」の表示を義務化することに決定しました。

 

■くるみの表示義務化について、消費者庁ではどのように周知っているのでしょうか。また事業者反応はいかがですか?

事業者の皆さんへの周知は、主に事業者団体を通じて行っています。食品の製造・加工・販売に関わる方々に幅広く情報を伝えるため、農林水産省とも連携しています。もともと表示を推奨しているため、すでに表示している事業者も多く、現時点では大きな驚きや戸惑いの声は頂いておりません。

 

一方で、くるみに限らず食品表示のルール改正全般において、「改正時には猶予期間を設けてほしい」「毎年ルールが変わってやりにくい」といったお声を頂くことがあります。そのため公布日から起算して2年間の経過措置を設けることとしました

 

事業者期待していることがあればえてください。

2年間の猶予期間を設けていますが、だからといって「2年はまったく何もしなくていい」というわけではありません。アレルギー当事者の皆さんの命に関わることですから、できるだけ早く準備を進めて対応していただけるとありがたく思います。そのために、我々もしっかりと周知を行っていきたいです。

 

今後特定原材料品目えるとしたら、どの食品わりそうでしょうか?

近年は「くるみ」を含む木の実類全体の症例数が多くなっています。令和3年度「即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」の結果では、原因食物の割合が鶏卵、牛乳に次ぐ第3位となりました。内訳において「くるみ」の次に多い「カシューナッツ」は、全体の2.9%を占めており、増加傾向にあります

 

ただし、義務化にあたっては、発症数、症状の重篤度、発症数割合等を引き続き確認する必要があるほか、公定検査法の確立も必要であることから、これからも注視していきます。

 

なお、カシューナッツは、現在「特定原材料の準ずるもの」であることから、一部の事業者は食物アレルギー表示を行っていない現状があります。このような事業者に対しては、表示について強く推奨する旨をお伝えしていくことを考えています。

 

外食のアレルギー表示についてはどのようにおえでしょうか。今度される可能性はありますか?

現在のルールは容器包装入り加工食品に適用されるもので、外食には適用されません。我々が外食事業者の皆さんに「表示が必要である」と言うことはできませんが、自主的な取り組みがみられること自体は好ましく感じています。

 

一方で、現時点でアレルギー表示をしている事業者はごく一部に限られており、アレルギー表示があること自体を知らない人もいます。意識や取り組みの差が非常に大きいため、ルール化しても実行できない事業者が多く、中途半端な表示が行われてしまう結果は患者の健康被害に繋がります。

 

ルール化の議論をする前に、まずは食物アレルギーに関する正しい知識を広めていくことが私たちの使命なのではないかと考えています。

 

■最後に食品事業者やアレルギー当事者のさんへのメッセージをお願いします。

食物アレルギーに関する食品表示や製造管理は、人の命につながる大切な仕事です。食品事業者の皆さんは、法令上の義務だから表示するという認識ではなく、消費者の命や健康を守るために取り組んでいるという意識を持ってこれからも取り組んでいただけたらうれしいです。

 

また、くるみの表示義務化には約2年の猶予期間が設けられることから、この期間には、表示をしている商品としていない商品が市場に混在します。また、猶予期間終了後も、賞味期限の長い商品はしばらく市場に残ることになります。アレルギー当事者の皆さんは、この点にご注意ください。我々も周知活動等に誠心誠意取り組んでまいります。

 

<図・グラフ出典元>

アレルギー物質を含む食品の表示について

https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/220606_shiryou2.pdf

くるみの義務表示化の 経緯等について

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_210217_03.pdf

 

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