アジア、アフリカ、中東を中心に、世界各国で信仰されているイスラム教。イスラム教では食べてよいもの・いけないものが戒律をもとに決められており、食べてよいものは「ハラールフード(ハラルフード)」と呼ばれます。一見食べられそうなものでも食事規定に反する場合があるため、原材料をしっかりと確認して料理を提供することが大切です。
イスラム法において許されたものを「ハラール(ハラル)」、禁じられたものを「ハラーム」といいます。食習慣をはじめ衣服や化粧品、旅行など、イスラム教徒の生活全般で大切な基準とされています。ハラールにあてはまる食品を「ハラールフード」または「ハラルフード」と呼びます。
イスラム法の戒律がもとになっているため、基本的なルールはムスリム全般で共通ですが、どこまでをハラールとするか、どこまで厳格に守るかは宗派や地域、個人の信仰の度合いによって異なります。食事を提供する際にはなるべく個別に対応しましょう。
イスラム教徒が食べられないものとしてもっとも有名な食品です。食品そのものだけでなく、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工食品や、豚のエキス・油にも注意が必要です。ブイヨンやゼラチン、豚の脂であるラードは使用しないでください。ラードの代わりには植物性の油を使うとよいでしょう。
豚肉を見るだけで嫌悪感を抱く人や、豚肉と同じ器具を使って調理された食べものを忌避する人もいるため、調理や配膳にも配慮できるとより安心です。
NGメニュー例:豚肉入りのカレー、豚骨ラーメン、豚エキスを使用した調味料やドレッシングなど
イスラム法では、アルコールの摂取は禁忌とされています。酒はドリンクとしてだけでなく、料理酒やみりん、香りづけ用のワインなど、調味料として使われることもあるため調理の際にも注意しましょう。お菓子やデザートに入っているリキュールも食べられないため、原材料をしっかりと確認してください。
なお、アルコールをイメージさせるものや空間も避ける傾向があります。お酒を飲まない人にはグラスを提供しないようにするなど、不安にさせないための配慮が必要です。
牛肉や鶏肉、羊肉など、豚肉以外の肉であっても、イスラム法の規定に則した屠殺方法・調理器具・調理場で処理されていない肉はタブーとして避けられます。
海外から輸入した肉には、適切な処理を施したかどうかわかるように「ハラルマーク」をつけることも多いです。ただし、厳格な教徒でない限りは「豚肉でなければ大丈夫」という人も実際には多いため、個別に確認するとよいでしょう。
一部の宗派ではウロコのない魚を食べません。うなぎやイカ、タコ、貝類は避けたほうが無難です。また刺身や寿司などの生魚は食べ慣れていないため苦手に感じる人がいます。
食べることが許された「ハラールフード」は、基本的にはハラームでないすべての食品でを意味します。そのためベジタリアン向けのメニューであれば問題なく食べられるケースが多いです。たとえば下記の食品を食べることができます。
パン、米、パスタ、シリアルなど。具材としてハラームな食品が使われていなければ食べられる。
加熱状態に関わらず、すベての食品。動物性の油脂で調理されていなければ食べられる。
動物性の食べものでも卵は食べられる。牛乳・ヨーグルト・バターなどの乳製品もOK。
豚肉以外の肉は、宗教上適切に処理されていれば食べられる。厳格な信者でなければ「豚以外」なら処理方法にかかわらず食べる人も多い。
基本的にはすべて食べるが、ウロコのない魚は食べない人もいる。生魚は好まれない場合が多い。
豚肉と酒類はさまざまな食品に利用されているため、調味料などの加工食品までしっかりと原材料を確認してください。同じ調理器具で料理された食べものも忌避するケースがあるため、可能な場合は調理器具や厨房を分けましょう。
血液を忌避する傾向があるため、肉や魚の焼き具合には注意が必要です。生魚を食べる習慣がないため、日本食では天ぷらなどが好まれます。
イスラム教徒は宗派や国、文化、個人の対応によって食事制限の内容が異なります。事前に一人ひとりに食べられるもの・食べられないものを聞いておくとよりスムーズに対応できます。
ハラルフードをどこで食べられるかわからず困ってしまうムスリムが多いため、提供できる飲食店やホテルは店先やホームページ上で明示しておくとよいでしょう。
料理に使用した食材や調味料については注文時や提供時に丁寧に説明し、ムスリムに不安を抱かせないように配慮することが望ましいです。可能であればメニュー表にも記載しておくと親切です。
ビュッフェ形式の場合は料理の上に肉の名前などを掲示し、すぐにわかるようにしておきましょう。豚肉は目にするだけでも不快に感じる人がいるため、イラストは載せないようにしてください。
イスラム教では食事をしたり料理を提供したりするときには右手を使うのがマナーです。料理を手渡す際には左手を使わないように気をつけるとともに、パンなど手を使って食べるものを提供するときには右手に置いてください。
ムスリムには1日5回礼拝をおこなう習慣があります。食事の前後に時間が重なる場合があるため、可能であれば礼拝ができるスペースを用意しておくとよろこばれます。東西南北の方位を尋ねられたときに答えられるように事前に確認しておくと安心です。
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