ナッツアレルギーは近年増加傾向にあるアレルギーのひとつです。ナッツはお菓子やドレッシングなどさまざまな食品・料理に使用されているため、原材料を十分にチェックするとともに、コンタミネーション(意図しない混入)にも気をつけましょう。
ナッツアレルギーは、アーモンドやくるみなどナッツ類(木の実類)に属する食品を摂取することによって発症するアレルギーです。
健康志向の高まりや食の多様化などを背景として、ナッツの消費量は増加傾向にあり、ナッツアレルギーを発症する人も急速に増えています。消費者庁が令和3年度に行った全国調査では、食物アレルギーの原因物質としてナッツ類が13.5%を占め、鶏卵と牛乳の次に多いアレルギー原因食物であることがわかりました(※)。このアレルギーは子どもだけでなく大人にも増加しており、ある日突然違和感を覚えて気づく人もいるようです。
症状は口の中のかゆみや違和感、しびれ、皮膚のじんましん、咳、喉の痛みなどさまざまで、多くは摂取後15分以内に発症します。少量でも腹痛や下痢、吐き気、嘔吐、呼吸困難、アナフィラキシーといった重い症状を発症する可能性があるため、食事の際には原材料の念入りなチェックが必要です。
アーモンド、いちょう(ぎんなん)、カシューナッツ、カヤの種子(ヒジツ)、栗、くるみ、カカオ、ココナッツ、サネブトナツメの種子(サンソウニン)、サプカイアの実、沙羅双樹の実(サル脂の原料)、チンカピン(ツブラジイ)、トチの実、ニワウメの種子(イクリニン)、パキラナッツ、パラダイスナッツ、ひし(ひしの実)、ピスタチオ、ビーチナッツ、ヒッコリーナッツ、ブラジルナッツ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ、ペカンナッツ、マカダミアナッツ、松の実、ヤシの実
※参考:令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書
ナッツにはさまざまな種類がありますが、なかでもくるみ、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツは発症する人が多いため特に注意が必要です。
消費者庁が管轄する食品のアレルギー表示制度においても、くるみはアレルギー表示が義務づけられる「特定原材料」に、アーモンドとカシューナッツはアレルギー表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」に指定されており、マカダミアナッツも2024年3月に「特定原材料に準ずるもの」に新しく加えられました。
一種類のナッツアレルギーがあるからといってすべてのナッツに対して発症するわけではありませんが、クルミ科のくるみとペカンナッツ、ウルシ科のカシューナッツとピスタチオのように相関性の高いナッツもあります。食事をする本人も、食事を提供する人も、どのナッツに対して発症するのか注意深く確認しておくことが大切です。
ナッツ類を食べて何らかの症状が出た人や違和感を覚えた人は、内科・耳鼻咽喉科・小児科(子どもの場合)などの医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。主な検査方法には、血液検査、皮膚に抗原のエキスをたらす皮膚プリック検査、実際に食べてみる食物経口負荷試験があります。アレルギー検査を取り扱っていない病院もあるため、事前に確認してから受診しましょう。
検査後は医師の指導にもとづいて、原因食物をとりのぞく「除去食」や、原因食物を少しでも食べられる人が徐々に食べる量を増やしていく「経口免疫療法(減感作療法)」といった方法で治療を進めていきます。万が一症状が出た場合に服用する薬やエピペン®注射が処方されることもあります。適切な治療と対策を行い、できるだけ安心して食事をとれる環境をととのえましょう。
ナッツはさまざまな加工食品や料理に使用されており、粉末やペースト状にしたものがソースやドレッシング、飲料に含まれている場合など、一目では判別できないケースもあります。目視のみで判断せず、原材料欄をチェックしたり、店に確認したりして、正しい情報を得るように心がけましょう。
食事を提供する側も、アレルギー表示が義務づけられていないナッツもあることを念頭におき、注意深く原材料欄をチェックする必要があります。人によっては調理器具の共有などによるコンタミネーション(意図しない微量混入)にも反応する場合があるため、事前に確認しておきましょう。
主食:パン、シリアル、カレー etc.
調味料:カレー粉、アーモンドパウダー、味噌、ドレッシング、バジルソースetc.
洋菓子:クッキー、フィナンシェ、チョコレート、マカロン、モンブラン etc.
和菓子:羊羹、まんじゅう、どら焼き、ゆべし、栗きんとん、せんべい etc.
飲料:ココナッツミルク、アーモンドミルク、カフェのドリンク(トッピングなど)etc.
落花生(ピーナッツ)はその名称から木の実類であるナッツ類と混同されがちですが、マメ科の食品です。
しかし、ナッツ類アレルギーの人は落花生にも反応することがあり、落花生もナッツ類としてまとめて申告する人がいます。食事を提供する人は、聞き取りの際に十分注意しましょう。
さらに、まれに大豆アレルギー(加工品:きなこ、豆乳、納豆など)やゴマアレルギー、その他豆類に対するアレルギーをナッツアレルギーと混同している人もいるようです。具体的にどの食材に注意する必要があるのか、正確に聞き取ることが大切です。
<アレルギー辞書一覧>
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