コチニール色素は、着色料や染料として食品や化粧品、医薬品、衣服などに幅広く使用される赤色の天然色素です。「カルミン酸色素」とも呼ばれ、コチニールカイガラムシ(エンジムシ)という中南米原産の昆虫から抽出されます。
その鮮やかな赤色と退色しにくい性質から、食品ではハムやかまぼこ、菓子など、化粧品では口紅やチーク、アイシャドウなど多くの製品に利用されています。アレルギーを引き起こす可能性があるため、近年は「低アレルゲンコチニール色素」の開発も進んでいます。
コチニール色素アレルギーは、色素そのものに含まれる成分よりも、製造過程で取り除かれずに不純物として混入した昆虫由来のたんぱく質が原因となるケースが多いといわれています。
コチニール色素に対するアレルギー反応には個人差がありますが、一般的な症状として皮膚の発疹やかゆみ、じんましん、顔や喉の腫れなどが挙げられ、重篤な場合は呼吸困難やアナフィラキシーショックといった症状があらわれることもあります。
症状があらわれた場合は速やかに皮膚科やアレルギー専門医などを受診し、適切な対処法を講じることが大切です。食品の原材料表示や化粧品の成分表示などをしっかりと確認してアレルゲンを避けることで、日常生活でのリスクを減らすことができます。
コチニール色素は主に以下の食品・化粧品・医薬品に含まれる場合があります。アレルギーがある人は、赤系・ピンク系の色で着色された商品に特に注意しましょう。「カルミン酸色素」という別名や「コチニール」「カルミン酸」といった簡略名で表示されるケースもあるため、原材料表示や成分表示を慎重に確認するようにしてください。
<食品>
ハム、ソーセージ、かまぼこ、カニカマ、かき氷のいちごシロップ、いちごジャム、キャンディ、アイスクリーム、ヨーグルト、ジュースなど
<化粧品>
口紅、リップグロス、チーク、アイシャドウなど
<医薬品>
カプセルの着色、液体薬の色付けなど
なお、コチニール色素は食物アレルギー表示義務のある「特定原材料」や表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」に指定されていません。また、添加物なので原材料表示の中では下部に明記される場合が多い傾向があります。
そのため見逃しやすいですが、ホテルや飲食店ではしばしばゲストからアレルギーの申し出がなされています。料理の提供者は十分に注意しましょう。
コチニール色素アレルギーの診断は、皮膚科やアレルギー専門医などによる問診や皮膚テスト、血液検査などによって行われます。
アレルギーが確認された場合は、コチニール色素を含む製品を食べたり使用したりしないように心がけましょう。重篤なアレルギー反応を起こしやすい人は、医師の指示に従って自己注射用のエピペン®を携帯してください。
症状が出た場合は、医師の指示に従って治療を行います。抗ヒスタミン薬やステロイド薬を服薬して症状を和らげたり、エピペン®を投与したりすることになるでしょう。
コチニール色素は幅広い食品に使用されており、表示もわかりにくい場合があるため、見逃しやすいアレルゲンのひとつです。
誰もが知るメジャーなアレルギーではないため、対応に戸惑うこともあるかもしれませんが、まずは原材料表示を念入りに確認し、どの食品にコチニール色素が含まれているかを正確に把握するところから始めましょう。
原材料の確認と管理、調理環境の整備、従業員の教育、そしてゲストへの情報提供を徹底し、アレルギー事故を防止することが、顧客からの信頼獲得につながります。
なお、コチニール色素は動物由来であることから、アレルギーではなく菜食主義や信仰上の理由から忌避されるケースもあるようです。こちらも見逃しやすいので、ゲストから申し出があった場合には注意して確認を行いましょう。
<食物アレルギー辞書一覧>
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